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"絵画における墨の魅力とは" 阿波野由起夫インタビュー


作家インタビュー三回目は、阿波野由起夫さんです。阿波野さんの作品は一見しただけでは気付かないかもしれませんが墨で描かれています。日本水墨画大賞展2018にて準大賞を受賞されている作家さんで、緻密に描かれた作品は本当に美しく魅力的です。制作プロセスから趣味の植物のことまで語っていただきました。

"絵画における墨の魅力とは" 阿波野由起夫インタビュー

菱田篤司

September 20, 2019


ー まず簡単に自己紹介、プロフィールをお願いします。

阿波野由起夫。大阪生まれ。京都の芸大で絵画を学び今は墨の作品をメインに作家活動をしています。

ー 最初に阿波野さんの作品を見たときは、作品全体の美しさや緻密な描写に驚きました。墨で作品を描こうと思ったきっかけや、墨でしか表現できないことについて教えていただけますか。

紙に描くのが好きで鉛筆やペン木炭など色々な画材を使って作品を作っていたんですが、墨を使ってみたところ均一な色面やグラデーションを作るのがすごく気持ち良かったのでそれ以来メインで使っています。
墨にしか出来ない表現はなんでしょうね。モノトーンで紙の作品を作るにあたって「和紙に墨」というのが1番単純で信頼出来る気がするだけで墨の表現力というものを抑えるような描き方を自分はしていると思います。殆ど「ぼかし」しか使わないので。
でも1つのアクションからイメージが生まれるまでのスピード感というかダイレクトな感じが墨の表現の魅力の1つなんだろうなと思います。

ー なるほど。多くの人が阿波野さんの作品がどうやって描かれているのかに興味を持っていると思います。どのような道具を使用して、「ぼかし」も含めてどのように描いているのか(技術的な点)について、お話しできる範囲でよろしいので教えていただいてもよろしいでしょうか。

墨は墨汁を使っています。原液から千倍に薄めたものまで濃度別に14段階作っておきます。これを蒔絵筆という非常に細い筆を使って塗っていきます。
墨が完全に紙に染み込んで乾燥するまでに水を含ませた筆でぼかす事で綺麗なグラデーションができます。
実際には水でぼかすよりも1つ隣の濃度の違う墨汁を使って段階的に色を変えていくことが多いです。そうすることでより滑らかなグラデーションを作ったり細かくコントロールすることが出来るので。1度塗っただけではムラがあったり紙の繊維が白く残り思い通りの発色にならなかったりするので何度か塗り重ねてイメージに近づけていきます。

阿波野由起夫image

ー 相当細かく根気のいる作業ですね。一作品あたりどのくらいの時間がかかるのでしょうか。

作品によってまちまちですが70×50cmくらいのサイズで下がきに2〜3週間、塗るのに3〜4週間くらいです。10cm四方を塗るのが大体7時間くらいですね。

ー そうすると一作品につき1〜2ヶ月はかかるのですね… 新作は1年以上の待ちになると以前おっしゃられていましたものね。ところで阿波野さんは創作の際に何からインスピレーションを受けることが多いですか。

ここ数年は架空の部族を描くというシリーズに力をいれているので実際に色々な部族の写真をみて刺激を受けたり、海外のファッション関係のSNSも面白くて参考になるのでよくみています。あとタトゥーアーティストの作品からすごく影響を受けていて絵の登場人物には全員タトゥーを入れています。人間の持つ本来の美しさを超えた何かを求める人々からインスパイアを受けているんだと思います。

阿波野由起夫image
水底の女神/Goddess of the Deep Water(部分) 970×1300mm  2019


ー 部族シリーズは本当に痺れるカッコ良さですよね。阿波野さんの美的感覚はかなり私の好みです(笑)
一方で当ギャラリーに出展していただいている作品は、動物や植物を題材にしたものが多いですね。元々私達が知り合ったきっかけはインスタグラムで、お互いに植物好きで繋がったわけですが、阿波野さんのコレクションの量が凄くて、最初は植物販売が本業かと思っていました(笑)
植物にハマったきっかけや魅力について教えていただけますか。

絵の資料探しで植物を調べてたらパキポディウムの存在を知って多肉植物面白いなぁって思ってたんです。ブームのおかげか花屋さんでも珍しい物をちょくちょく見かけるようになって、そんな時友人に専門店に連れて行ってもらったら見たことない光景が広がっていてそれから一気に火がつきました。
単純に見た目の面白さが1番ですが他にも色々な魅力があって知るほどにのめり込んでしまいます。
例えばゲーム性があるところとか。適当にやってると上手く育たないのが解決策を考えて工夫することでちょっとずつ改善されて植物が美しくなっていく。そうやって問題をクリアして報酬を得る感じがゲームっぽくて楽しいなって思います。すごく欲しいけどなかなか手に入らない物をやっと手に入れた時の喜びやそれを繁殖させて植物仲間と交換したりするのはポケモンやってるみたいだなと思ったりもします。
すごく手間と時間がかかりますが自分で交配してオリジナルの品種を作る事もできます。集めるだけでなくそこから更に良くしたり新しいものを作れるのも楽しいところです。
あとロマンがありますね。名品と呼ばれるような優良な品種や少量しか日本に入って来なかったすごく貴重な株が愛好家の手で大事に繋がれて今も存在していたりします。そういうものを眺めながら遠く離れた自生地の事や自分の手元に来るまでの歴史に思いを馳せるのも楽しみのひとつですね。


澱み(Slack water) 279×230mm 2014

ロフォフォラとトカゲ(A Lophophora and A Lizard) 340×248mm 2016
阿波野さん植物
阿波野さん植物阿波野さん植物阿波野さん植物
阿波野さんの植物コレクションの一部

 

ー 植物にハマったきっかけは絵の資料探しだったのですね。
多肉植物は自然が作り出した奇跡的な美しさだったり、愛嬌がある面白いフォルムだったり、本当に魅力的ですよね。
阿波野さんの植物の方のインスタを見ていると、のめり込み方が半端ではなくて、凝り性の性格が滲み出ているなと感じました(笑)
それが作品の緻密さにも表れているのかもしれませんね。
絵画のことよりも植物の話の方が熱が入っている気がしますが(笑)、今後の創作活動において何か新たな構想などはありますか。

冒頭で言ったような墨ならではの表現をあまり使わないような描き方を今はしていますが今後はそういった表現を混じえたような方法も研究したいと思っています。
あと今までは架空のモチーフに存在感を与えるため細部まで描きこむというやり方ですが実際に模型なりなんなりある程度物を作りこんでからから描くことでもっとリアルさが出たり逆に省略できる部分が見えやすくなって絵として面白くなるのではないかと考えて実験しています。
この2つの方法でスピードアップが出来たらいいなという思惑もあります(笑)

ー 確かに現在の作風だけでしたら1年に数作しか完成しないですものね(笑)
新たな手法にも取り組まれるのですね。それは非常に楽しみです。
期待していますので、これからも頑張ってください。
本日はありがとうございました。

 

【後記】
インタビューの中にもあるように、私が阿波野さんと知り合ったきっかけは植物であった。その後、阿波野さんの作品を初めて見た時にその美しさに衝撃を受けたのを覚えている。そしてそれが墨で描かれているということは更なる衝撃であった。多くの時間をかけて作り込まれている作品は見る者を強く惹きつける。今の作風を変えずにいって欲しいと思うところもあるが、現在構想中の新たなスタイルにもかなり期待してしまうし、とても楽しみである。

>作品一覧

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