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”自分が見たい景色を墨で描き続ける” 笠木玉泉インタビュー


今回の作家インタビューは笠木玉泉さんです。笠木さんの作品は、墨で描かれたモノトーンの抽象的な表現の中に美しい情景、風景、世界があり、見る者を飽きさせません。これらの作品がどのようにして生まれているのか、何が描かれているのかなど興味深いお話をお聞きすることができました。

”自分が見たい景色を墨で描き続ける” 笠木玉泉インタビュー

菱田篤司

March 23, 2020


ーいつから書や絵画を始めたのですか。
子供が習字の教室に通い始めて、お母さんもやってみたらどうかと勧められて大友正筆会の大池聖雲先生に習い始めたのがきっかけ。大体35年前くらいかな。先生が亡くなるまで15〜16年は習っていたのだけど、お手本の練習はほとんどやらないで、古典の臨書ばかりやってた。好きなものを書いて良いという先生だったので、毎年開催される展覧会のために作品は一生懸命書いていたかな。

ーのめり込むだけの魅力を書に感じたということでしょうか。
そうね。なんだか知らないけど面白かったのね(笑)昔のことだから忘れちゃったけど。

ー以前ボタニカルアートも描かれていたというお話を聞きましたが、それは書よりも後に始められたのですか
いや、並行してやってた。

ーでは墨で絵を描くようになったのはいつ頃のお話なのですか。
13〜4年前ね。

ー何かきっかけがあったのですか。
先生が亡くなって、自由になったわけだから好きなことをしようと思って。墨で遊んでいたらああいうことになった(笑)

ー最初は墨で花を描くことがメインだったのですか。
いや、そんなことない。最初からあんな感じ。ボタニカルアートって大きさが1:1なのね。花が目の前にあったら同じ大きさで描くわけ。だから木は描けないわけよ。なんか「木を描きたいな」と思って、同じものを3枚描いて、4枚目を描いたらいきなりそれが抽象になっちゃったのよ。「あら、これは面白い!」と思って。なんか抽象ってオレンジをジュースにするようなもんなんだなと思って、(作風が)あんなんなっちゃった(笑)

ー作品は何かをイメージして描かれているのですか。
最初に概念が来て、それから頭の中にある画像を紙の上に落としていくの。

ー作品に描かれているのは景色なのですか?
私は北海道出身なんだけど、(北海道に)行けないじゃない? だから景色の場合は見たいものを描いているのよ。

ー『冬来』という作品がありますが、あれは景色なのですか。
景色というか、冬が来る前の雰囲気よ。北海道の冬。今は外気温も家の中も暖かくなったけど、昔はもう本当に空気がピシピシ凍るような感じで、家の庭に白樺があったのだけど、冬になると中が凍って裂けるのよ。そういう感じ。まさに作品の感じ。
笠木玉泉 冬来 Gyokusen Kasagi Winter Comes 墨画 墨絵

『冬来』

ー確かに笠木さんの作品はイメージのようであり景色のようでもありますね。
私が作品を見ていて思うのは掛け軸の裂(布)の部分が内壁で、作品の部分は窓から見えている景色というか、実際は窓の向こうにはもっと大きな広大な景色が広がっているようなイメージを受けるのですが、作品は広い世界を表しているのですか?
そうね。そうだと思うよ。人ごとのようだけど(笑)

ーどちらかというと心象風景のような感じなのでしょうか。
そうね。風景的なものを描くと大体北海道の景色になるので、きっとそうなのよ。綺麗だなと思うのって大体冬の風景なのよ。私は綺麗なもの、見たいものを描いているのだと思う。

ーそうすると夜の風景なのですか?
あのね、冬になると日中でもモノトーンになるのよ。雪の風景って白と黒なのよ。実際はブルーもあるのだけど、うるさくないのよ。色数が少ないから。雪が降った後なんてすごい綺麗でね。吹雪の時も綺麗だったよ。
今は東京にいるけど、ここら辺の風景が綺麗だとは全然思わない。頭の中にある「綺麗」はあの頃のものなのよ。遠くに見える白い山とかね。描いていると自然に自分が見たいものを描いている。

笠木玉泉 西方 Gyokusen Kasagi To Pure Land 墨画 墨絵

『西方』

ー墨で描かれることが多いと思うのですが、使用する墨にこだわりなどはあるのですか。
私は茶墨が好き。青墨は奥行きが出ない。私は作品を真っ黒にするじゃない?真っ黒にすると青墨だと硬いのよ。

ー使う墨は決めているのですか。
このごろは父が小中学校の時、今生きていれば100歳だけど、いっぱい買っていた子供用の墨があるのよ。それが90年くらい経っていて、高価な新しい墨よりずっと良い色が出る。

ーやはり古い墨は違いますか?
違う。なんか本当にいい色になる。同じメーカーの同じ墨っていうのは今でもあるのよ。だけどそれと比べると雰囲気が全然変わる。膠(にかわ)の広がり方とか、色が落ち着いた感じになるのよ。

ー笠木さんの作品には様々な墨の表情がありますが、あれは狙って出せるものなのですか?
もちろん。狙って出せるからあのような作品になっているんじゃない。ただ、狙った範囲内に収まっちゃうとそれはつまんないよね。狙った範囲の外に出たものが面白い。
すごく色が濃いように見えるかもしれないけど、薄い墨を何回も塗り重ねて濃くしているので、黒に奥行きが出るのよ。濃い墨を一気に入れると膠が浮いて照りになって、テカテカしちゃうのよ。だから一発であの濃さの黒を入れたら黒が浮くよ。

ー細かい模様はどうやって重ねていってるのですか。
みんなして「これどうやってやったの?」って言うじゃない?「どうやってやったの?」じゃなくて「これ凄いね」って言ってくれたらいいのに。みんな「これどうやってやったの」しか聞かないから(笑)

ーあるキュレーターさんに作品を気に入ってもらって、作品が海外を回っているとお聞きしましたが、それはいつ頃からのお話しなのですか。
5年くらい前かな。その方が何点か作品を欧州に持っていったら、評判が良かったようで、それから次々に持っていかれるようになった。ギャラリーでの展覧会ではなく、全て公的な美術館か博物館での企画展のようなもので展示されている。最初に持って行った作品はまだ日本に戻って来ないで、今度アルバニアで展示して、その後ロシアに行く予定だって言ってた。もう5年以上戻ってこない作品はたくさんある(笑)
墨でしか表現できない作品をやっているから、すごく珍しいみたい。

ー今後やってみたいことはありますか。
描きたいものはいっぱいある。これからも描き続けたい。人が見たことないようなものが描きたいと思ってる。

ー本日はありがとうございました。


【後記】
今回話を聞かせていただいて、作品が何を表現しているのかということについて、より理解が深まり、貴重な時間となった。笠木さんは事情があって中々外出ができない中で、「自分の見たい景色」、「綺麗なもの」を見るために作品を描いていることもあり、抽象的な心象風景であったり、概念の具象表現であったり、一見それが何を表しているのかわからないこともあるが、共通することは「美しいもの」であることだろう。笠木作品は美しい世界への入り口であり、窓である。作品を飾ることで、自宅の壁にもう一つの世界が見える窓があると考えると面白い。

 

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