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“ヨーロッパにおける『書』 と  掛軸の魅力について”  乃鳳インタビュー


作家インタビューの第二回目は乃鳳さんです。乃鳳さんはヨーロッパ生活が長かったことや、掛軸までご自身で仕立てること、Udemyで世界中の方に書道を教えるなど、書家としては異色の存在であり、それが作品の独創性にも繋がっています。
掛軸の魅力から、ヨーロッパにおける『書』についてなど、興味深い話をお聞きしました。

“ヨーロッパにおける『書』 と  掛軸の魅力について”  乃鳳インタビュー

菱田篤司

August 06, 2019


ーこんにちは。まずは簡単な自己紹介・プロフィールをお願いします。

こんにちは、乃鳳(のほう)といいます。よろしくお願いします。
書道は子供の頃から嗜んでいますが、自分が所有し飾っておきたい「書」を書きたいと常に思っています。つまり、書いて終わりではなく、書いた「書」が身近に飾られ愛着を持ってもらうことが私の一つのゴールです。
他の作家さんと違う特徴的なところは、私はその「書」を演出する「表装」も自身で手掛けているところです。一般的に「作品」とみなされているのは字の書かれた紙の領域の中ですが、私の場合は布・軸先をも含めた掛軸全体で自分の世界観を表現しています。

両親が「表装店(表具店)」つまり、掛け軸や巻物を仕立てるお店を営んでいたので、書道や水墨画など様々な掛軸作品に囲まれて育ちました。書道をある一人の師について学んだことが無いのですが、様々な作家の方の作品を通して多くのことを学ぶことができたと感じています。子供の頃から沢山の作家さんの素晴らしい「作品」に数多く触れることができたというのは、今考えると恵まれた環境ですよね。

そんな私も、一旦は掛け軸から離れ、愛知県立芸術大学では油絵や版画などの西洋美術を専攻し、卒業後イタリア、ドイツでグラフィックデザイナーとして活動しました。書家としての活動を本格的に開始したのもその頃からです。日本から離れた生活が逆に「書」に戻るきっかけになったのかしら。

実は、書道家の活動だけでなく、外国人に書道を楽しんでもらうための活動にも力を入れています。2018年に世界最大級のオンライン学習サイトUdemy(ユーデミー)にて書道教室を開講しました。これも海外で日本文化を愛する人たちに出会ったおかげだと思っています。日本語が分からない人でも書道を楽しめるというのがコンセプトです。言葉を越えて書道文化の普及に貢献できたら嬉しいですね。

乃鳳 掛軸 Nohoh KAKEJIKU

 

ー掛軸を知らない人、見たことがない人もいらっしゃると思いますので、掛軸について簡単に説明していただけますか。

掛軸とは、書画を布や紙で表装して竹木などの軸をつけ,掛けて飾るように仕立てたものです。水墨画や禅語の書などが床の間に飾ってあるものを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は飾る場所は「床の間」でなくてもいいのです。

また、飾らないときは巻いてしまっておけるため、持ち運びと保管が簡単である点も大きな特徴です。

乃鳳 掛軸 Nohoh KAKEJIKU乃鳳 掛軸 Nohoh KAKEJIKU

 

ー掛軸の魅力について教えていただけますか。

額縁で飾られた絵画とは違って、掛軸はもっと「有機的」な気がします。ともすれば壁と一体化してしまうパネルや額縁とは違い、風が吹けばゆらりと揺れるし、湿度が高いとしっとりする。柔らく、呼吸する、そんな有機的な存在感があります。そして、私はそれが掛け軸の魅力の一つだと思っていす。

パネルや額縁をいくつも所有するのは日本の住宅事情では難しいですよね。でも掛軸だと巻いて小さくして保管できるので、いろんな作品を複数所有することができます。

季節や催事に合わせて作品を掛け替えたり。その日の気分で気軽に作品を選ぶことができる、実はとてもフットワークの軽い、扱いやすい媒体なのです。

 

ー乃鳳さんの掛軸の特徴について教えていただけますか。

「書道作品」部分と「表装」部分が一体になって一つの作品になっているということです。

書の表現が紙の上だけで終わらない、「広がり」があるのだと自負しています。

一般的な表装店に依頼して仕立てられた掛軸ですと、表装部分は書を引き立たせるための「縁飾り」のような役割として機能していることが多いのです。作家の世界は紙の上だけに限定しています。それ以外の部分は作家でない他人の世界観が介入してしまいます。

一方、私の作品は表装部分も作品の一部で、作品の世界観は布や軸先にまで広がって行きます。

自分の書を自分で掛け軸に仕立てていますので、素材や技法にとてもこだわっています。

時には自分で描画した布を使ったり、普段は掛軸には使われないような珍しい素材を使ったり…。表現方法も素材の点でも独創的であるかもしれませんね。

和室にももちろん合うのですが、西洋的な空間に掛けても美しい掛軸であるようにと心がけて制作しています。昔ながらの木造建築の家に育ったことと、15年にわたるヨーロッパで生活したことで和洋折衷の感覚が養われたと思っています。

乃鳳 掛軸 Nohoh KAKEJIKU

乃鳳 掛軸 Nohoh KAKEJIKU 

乃鳳 掛軸 Nohoh KAKEJIKU

 

ー確かに乃鳳さんの作品は、書と軸の世界観が統一されているのが大きな特徴であり魅力であると感じます。ヨーロッパでの生活が長かったという事ですが、日本人、特に書家にとって大きな関心がある、ヨーロッパにおける『書』の認知度、関心度、評価について教えていただけますか。

「Shodo(書道)」という単語を知っている人の数は「Sushi」や「Samurai」ほどではないですが、「Japanese Calligraphy」と聞けば漢字を筆でかいた書道作品を想像してもらえます。そして、その書への関心度は年々高くなっていると思います。

ミニマリズムやワビサビ文化がある種のトレンドである昨今、筆と墨と紙だけを使って表現する書道のシンプルさがヨーロッパの方々を魅了しているのようです。より複雑化する現代社会の中、人々は伝統的な日本芸術のシンプルさと和の風情を「癒し」のようなものとして求めているのでしょう。実際に街の美術館や博物館で「書や日本画」を扱う企画を目にすることが増えました。

オペラやクラシック音楽など、トラディショナルなものに敬意を払う文化のヨーロッパでだからでしょう、彼らの書への評価は驚くほど高く、「書」はとても高貴なものとして扱われています。成熟した文化人が嗜む崇高な芸術と認識されているようです。

しかし、ハイクラスな芸術ごとという認識だけでなく、日常生活の中でも「書」のデザインを取り入れた製品やインテリアを目にするようになりました。「ハイクラス」というよりは「ハイセンス」なものとして「書」に対する認識がシフトしていると言えるんじゃないでしょうか。今後もっと西洋生活のなかに普及していくと思っています。

乃鳳 Nohoh

 

ーなるほど。書が西洋の生活の中に当たり前のように取り入れられるようになると嬉しいですね。乃鳳さんが創作において特に意識していることを教えていただけますか。

私は一つの作品を制作する際に、「筆を休めない、墨を付け足さない」ということを意識しています。(もちろん、長い文章を書く時にはどこかで墨を付け足さないといけないのですが)。

始めの文字の第一画目から最後の文字の画まで、筆の動きが止まることなく一つの流動的なエネルギーの動きで表現できるようにと思って書いています。

作品の表面に現れる二次元的な軌跡だけでなく、その瞬間の時間の流れとエネルギーの流れを感じでいただけたらと思っています。

 

ー先ほどUdemyで書道教室を開講されているというお話がありましたが、開講のきっかけについて教えていただけますか。

初めてドイツ人に書道を教えた時のこと。書道の専門用語(例えばトメ・ハネ・ハライなど)、書道道具(硯や文鎮など)をドイツ語でなんというのだろうか、どのように表現したらわかりやすいかしらと、インターネット、図書館、書店などで教材を探してみたのです。しかし、調べてみると、その数の少なさとクオリティの低さにびっくりしました。結果はイタリア語でも全く同じでした。

英語での教材は他の言語よりも多かったのですが、残念ながらレベルはまだまだ低く、お手本の字がコンピューターの明朝体のフォントで書かれただけの本がベストセラーになっていたりしました。

「教材が無いのならば自分で作るしかない」

そう思ったのが後々Udemyで教えることになった出発点だと思います。

そして、日本へ活動拠点を移す時にドイツの生徒さん方が「通信でも良いから書道を続けたい」とおっしゃってくださいました。その時に、オンラインで書道を教えるというアイデアを思いついたのです。

それまで7年間、自分で教材や教え方を工夫して書道を教える経験の中で、独自のメソッドが出来上がっていました。これならば日本語を知らない人でも書道を楽しめる、しかもオンラインだったら世界中の方々が気軽に書道を始められるのではと考えたのです。

そしてビデオ教材を自分でコツコツと一年以上かけて作りました。もともとグラフィックデザインのお仕事もしていましたから、それがとても役立ちました。

 

ーUdemyを通して感じる世界の書に対する関心度について教えていただけますか。

とにかく、皆さんの「日本文化への関心の大きさ」と「日本文化への愛」を感じます(笑)

今現在約7500人の方々がコースを受講してくださっていますが、アメリカやカナダ、イギリスやインド、フィリピン等の英語が母国語の国が多いのはもちろんですが、びっくりするのは英語圏外の方も多いことです。ヨーロッパ、東南アジア、南米、アフリカ、中近東など、世界で130以上の国から受講してくださっています。

世界のあらゆる地域の方が日本文化へ関心を持ってくださっていることがわかります。

書道を「芸術」と捉えている方は本当に多いですね。「崇高な芸術活動」として真面目に書道を学びたいという方が多いです。

その一方で「精神統一やリラックス」などの瞑想的なものと結びつけている方も大勢いらっしゃる印象です。これは「わびさび文化」が世界的に広まっている証拠なのでは無いでしょうか。

世界中の人が現代社会の中で何かしらストレスを感じているようです。だからこそ「心を無にできる活動」を欲していて、それを日本文化の一つである書道に求めているようです。

 


【後記】
とても興味深い面白い話が聞けたインタビューであった。ヨーロッパにおいて『書』がどのように認知されているのか、また世界の多くの方々が書に興味を持っていることなどの話は、日本人として誇らしいことであると同時に、自国の文化を改めて見直すきっかけになるのではないか。また現代の洋風建築では見かけることがほとんどなくなってしまった掛軸についても、その魅力が再認識され、後世に残る文化となることを願う。乃鳳さんの作品の魅力は、書と掛軸が一体となった作品が放つ美しい世界観である。海外生活が長かったことが逆に「和の美」の香りを強く放っていると感じる。その世界観は乃鳳さんのインスタグラムでも感じることができるので、作品とあわせて是非ご覧いただきたい。

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